国家試験受験のための民法⑳
不法行為・事務管理・不当利得
1 不法行為
(1)不法行為の一般的成立要件
①故意または過失ある行為によること。
明しなければならない。
②行為者に責任能力があると。
・責任能力とは、その行為の責任を認識しうる知能が
あること。(通常は小学校を修了する12歳くらい
の知的能力が基準になる。)
③行為が違法であること。
④行為と損害に因果関係があること。(因果関係とは、
ある行為からその損害が発生することが通常であるこ
と。
(2)特殊な類型の不法行為
①被用者の行為に対する使用者の責任
・「事業の執行について」損害を加えたと言えるために
は、その行為が被用者の職務の範囲に属するかどうかが
重要な基準になる。被用者の職務範囲に属するかどうか
は、行為の外形から客観的に判断するものされているか
ら、厳密には被用者の職務外の行為であっても、使用者
の責任を負わなければならない場合もある。
・使用者が、被用者の選任・監督について相当の注意をし
たこと、または相当の注意をしても損害が生じたことを
証明したときは、使用者は責任を負わない。
・使用者の責任の根拠は、被用者の対する選任監督上の注
意義務違反にある。
・使用者の責任が生ずるためには、被用者自身に不法行為
が成立していなければならない。被用者、使用者の両者
の負う債務は、不真正連帯債務になる。使用者が第三者
に対して損害を賠償したときは、被用者に求償できる。
②土地の工作物の占有者・使用者の責任
・土地の工作物の設置または保存に瑕疵があったために第
三者損害を生じたときは、その占有者が第一次的な責任
を負い、占有者が損害防止のために注意義務を尽くして
いたことを証明したときは、第二次的に所有者が責任を
負う。(土地の工作物に当初から瑕疵がある場合「設置
の瑕疵、事後に瑕疵が生じた場合が「保存の瑕疵」)、
建物の占有者が損害防止のため注意義務を尽くしていた
ことを証明すれば、第三者に対して責任を負わない。
この場合、建物の所有者は無過失であっても免責されな
い。建物の所有者は、無過失であっても、常に損害賠償
の責任を負う。
③責任無能力者の監督者の責任
・監督義務者(親権者・後見人など)および理監督義務
者に代わってこれらの者を監督する代理監督者が責任
無能力者の行為に責任を負わなければならないことが
ある。無責任能力者の状態であった場合は損害賠償の
責任を負わないが、監督する義務のある医師は監督を
怠らんかったことを証明しなければ、損害賠償の責任を
負わなければならない。
④共同不法行為
・複数の者が共同で不法行為を行い、被害者に損害を生じさ
せたとき、各行為者は「連帯して」損害賠償を負わなくて
ならない(連帯しての意味について、判例は共同行為者各
人が被害者に対して不真正連帯責任負うとしている。
(3)不法行為の効果
①被害者は、加害者に対して物的損害のほか精神的損害
(慰謝料)についても賠償請求できる。
加害者が負うべき損害の範囲については、加害行為と相
当因果関係に立つ損害。
②被害者に損失あるときは、裁判所は被害者の過失を考慮
して損害を算定できる。過失相殺という制度である。
過失相殺の判断は裁判所の自由判断になる。
③債務不履行の損害賠償は債権者の過失を考慮して算定し
なければならない。不法行為に基づく損害賠償請求権は
被害者またはその法定代理人が損害の発生および加害者
知ったときから3年を経過すると時効消滅する。また不
法行為のあったときから20年を経過するとその権利
行使することはできない。
④不法行為債権を労働債権とすることは禁止されている。
⑤不法行為に基づく損害賠償請求権は、その発生と同時に
遅滞する。
2事務管理
(1)事務管理の意義
事務管理とは、なんら義務もないのに他人の行うべき
仕事(事務)を他人のために行うこと。事務管理は他人
ために義務なくして行った行為でも、利他的な意思を
もって行われ、本人の利益ないし意思に反しない行為に
ついてはこれを適法行為として一定の法律行為を生じ
させる。
(2)事務管理の要件
①他人の事務を管理すること。
②他人のためにする意思があること。
③法律上の義務がないこと。
④本人の意思および利益に適合すること。その事務を管
理することが本人の意思または利益に反することが明
らかなことでないこと。
(3)事務管理の効果
①管理者は、その管理を始めたことを遅滞なく本人に通
知する義務を負う。
②管理者は、本人利益に適し、本人の意思添うよう善良
な管理の注意をもってその事務を管理しなければなら
ない。
③管理者は、本人あるいは相続人または法定代理人が管
理できるようになるまでその管理継続しなければなら
ない。
④管理者は、本人から請求が請求があるときは、その管
理状況を報告し、管理上受け取った物があるときは本
人引き渡さなければならない。さらに本人に渡すベき
金銭を自分のために消費したときは、利息を支払う義
務を負う。
3不当利得
(1)一般的な不当利得
①不当利得の意義
不当利得とは、法律上正当な理由がないにもかかわら
ず、他人の財産または労務から利益を上げ、それによっ
て他人に損害を生じさせること。
②不当利得の要件
・他人の財産または労務によって利得を受けたこと。
(減少を免れたことを含む。)
・他方に過失損失があること。
・法律上の原因がないこと。
・受益と損失の間に因果関係があること。
③不当利得の効果
・損失者は、受益者に対して不当利得返還権が生ずる。
・受益者はその利益の存する限度で返還の義務を負う。
・受けた利益に利息をつけて返還する義務を負う。
・損害があるときは賠償もしなければならない。
(2)特殊な不当利得
①非弁済
債務がないのに、そのことを知りつつ弁済した者は、給
付したものの返済をすることはできない。
②期限前の弁済
債務者が弁済期期の到来していない債務を弁済した場合
その返還を求めることができないが、債務者が錯誤によ
ってその弁済をしたときは、債権者はそれによって利益
を返済しなければならない。
③他人の債務の弁済
他人の債務を自分の債務と誤解して弁済した場合におい
て債務者がそのことを知らずに証書を滅失・損傷し、担
保を放棄し、または時効により債権を失ったときは、弁
済したものの返還を請求することはできない。
④不法原因給付
男女間で女性が男性のメカケになる契約を締結してもそ
のような契約は締結しても公序良俗に反するものとして
無効になる。公序良俗に反するような反社会的原因によ
る給付は、不法原因給付としてその返還請求が否定され
る。不法な原因が受益者のみに存したときは、給付者
は、受益者に返還請求できる。受益者の不法性が給付者
のそれよりも著しく大きいときは返還要求は可能。